ヨガの歴史
ヨガの起源
ヨガは古代インドから悠久の時を超え、叡智と実践を通じて現代に伝えられてきました。 ヨガの起源ははっきりとはわかっていませんが、インダス川流域のモヘンジョ・ダロなどの遺跡からヨガ行者の坐像を表すようなものが発掘されたことから、約5000年前、インダス文明の頃にまでさかのぼることができるといわれています。
しかし川上光正師の見解では、ヨガの実践及び教義の原型は、インダス文明以前から存在していたと考えています。
ヨガの思想の確立
こうしてうまれたヨガは、インダス文明を創り出した民族に受け継がれ、ヨガの実修が行われていました。その後、紀元前1300年頃アーリヤ人の侵入によって、アーリヤ人最古の文献である『リグ・ヴェーダ』に見られる精神性と結びついて、ヨガの実践と教義はアーリヤ人に受け入れられます。
紀元前800年頃から紀元後100〜200年頃に編纂されたと推定される、ヴェーダの末尾の部分である古ウパニシャッドにより、ヨガの思想が確立されます。また、ヨガの技術、功徳、ヨガ実修法についても説かれており、原始的ヨガから次第にヨガ哲学を体系化し、古典ヨガへと変遷していく軌跡を読み取っていくことができます。
このウパニシャッドでは、6段階のヨガ実修法が説かれています。
このウパニシャッドにおいては、ヨーガの実践に関する規定も整い、ヨーガの六支分、すなわち呼吸の抑制、感官の統御、瞑想、心の統一、思考、三昧をあげている(Maitri-Up. Y, 18)。ここにあげられている六支分のうちから「思考」を取り去って、それに座法と制御と自制を加えると、『ヨーガ・スートラ』(2・29)に説く八支分となる。
(中村元『中村元選集〔決定版〕第9巻 ウパニシャッドの思想』春秋社、1990年、p.594)
なお、ウパニシャッドからの引用については、川上光正師が『ヨガ健康学論』出版の折に中村先生の許可をいただいています。
さらに、瞑想については次のように書かれています。
〔瞑想(『チャーンドーギヤ・ウパニシャッド』7・6)〕
1 〔サナトクマーラがいった、〕〔瞑想〕はじつに心よりもさらに優れている。大地は瞑想しているかのごとくである。虚空は瞑想しているかのごとくである。天も瞑想しているかのごとくであり、水も瞑想しているかのごとくである。山々も瞑想しているかのごとくであり、神々と人間も、瞑想しているかのごとくである。それゆえに、この世において人間どものなかで偉大性を克ち得る人々は、瞑想の果報の分け前にあずかっているかのごとくに見える。他方では劣った小人物は争いに耽り、悪口をいい、他人を誹謗するものであるが、他方では偉大な人々は瞑想の報いの分け前にあずかっているかのごとくに見える。瞑想を念想せよ」と。
2 〔サナトクマーラがつづけていった、〕「瞑想がブラフマンであるとして〔瞑想を〕念想する者は、瞑想のおよぶかぎりでは、そこでかれは欲するがままに行動することができるであろう。――瞑想がブラフマンであるとして〔瞑想を〕念想する者は」と。
(中村元『中村元選集〔決定版〕第9巻 ウパニシャッドの思想』春秋社、1990年、p.322-323)
また、紀元前200年頃に成立し、紀元後に原型がまとめられ『マハーバーラタ』の中に編入された『バガヴァッド・ギーター』には、さまざまなヨガがあげられており、多様な解脱の道を説いています。
ヨガの体系化
それからさらに時が流れ、パタンジャリが編纂したヨガの根本教典といわれる『ヨーガ・スートラ』が誕生します。(5世紀頃。成立年代には諸説あります。)これは、古代インドから伝承されてきたヨガを初めて理論的に体系化したもので、ヨガの教義、基本行法、構造が端的に、しかもシステマティックに集約されています。サーンキヤ哲学をベースに、ヨガに形而上学的理論を与え、1つの哲学システムとして確立されました。また8段階のヨガ実修法も確立されました。
ヨガの発展
『ヨーガ・スートラ』後の時代になると、古典ヨガのある局面を強調し、発展するヨガが現れてきます。
ハタヨガは、座法と呼吸気法を中心とする身体的修法に重きを置く修法として8〜9世紀頃から発展していきました。ハタヨガの文献としては、『ゲーランダ・サンヒター』『シヴァ・サンヒター』『ハタヨーガ・プラディピカー』などがあります。
これに対し、それまでの『ヨーガ・スートラ』の示す精神統一に重きを置く古典ヨガは、ハタヨガと区別してラージャヨガと呼ばれるようになります。
また同様に、クンダリニーヨガが発達してきましたが、ハタヨガやラージャヨガより高次な位置にある神秘的なヨガであり、師から弟子へと口授口伝によって密かに伝えられてきたために、多くは明らかにされてきていません。
そして時を経て、さまざまなスタイルのヨガへと枝分かれしていくことなります。
※詳しくは川上光正著『ヨガ健康学論』をお読み下さい。